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Blue Orb

11:00, August 5 2023

(これは何: IETF 117の非技術記事、特に個人的な思いみたいなのを書いた記事です)

Into this bliss I am reborn, embracing this translucent dawn.
I hestitate, don’t want to shake this world..
 
A thousand dreams I long to share, unspoken beauty haunts the air,
I smoulder with the secrets in my heart.
 
If only you could feel it too..

12年前の10月にサンフランシスコに向かう飛行機で、当時出たばかりのonokenのアルバム“Blue Orb”を聴いていた1。そのときは日本とアメリカのスタートアップでビジネスをするために学生アルバイト・インターンを募集していた案件に応募して、それによってたまたま昔住んでいたカリフォルニアベイエリアを訪れることができた。修士課程に進学っするにつれてフェードアウトしてしまったが、今でも当時働いていた方には覚えていただいて、近い分野を触っていることもありたまに交流がある。

それはさておき、今回のIETF 117行きについて。

単に生存するだけでなく、ついに外部資金に頼らずに自力でIETFに行く、というところまで来れた。これは「他人のお金で海外に行きたい」というモチベーションで仕事に応募した12年前からしても、とにかくフリーのエンジニアとして生存することを目的としていた2年前からしても、大きなステップを踏めたと思っている。

外部資金が入っていないということは業務上の必要性が特になく遊びに行っているだけでは?という批判が想定されるが、少なくともOAuth WGの動向調査については本業にも関係がある(そのためリリース手前にもかかわらず1週間の間空けることを理解していただいている)し、実装で取り組んでいる内容は今後関わりを深めていくつもりの分野を選んでやっている。はっきりいって単に遊びに行くためだけに100万円近い金を投じられるほど余裕はない。

今年覚悟を決めて海外IETF会合に行くことにしたのは、今年の2箇所が私にとって思い入れの深い場所だからである。一つは私が幼少期の一時期を過ごしたカリフォルニアベイエリアで、もう一つは私が業務での国際会議デビュー?を果たしたプラハである。これほど星の並びが揃うこともあるまい。


本当はDJ Rewind2が生きているうちに行きたかった。しかし私の力が及ばずそれは叶うことがなかった。

今回は彼を通して知り合ったベイエリアのDJ集団AniCLoverの方に1日ほど連れ回していただいた。曰く、DJ Rewindの始めたKitchencoreというイベントは現地のサブカルDJ界隈ではlegendaryな集まりであるとのこと。ここでも彼の足跡の偉大さを垣間見ることができて感激している。


私がカリフォルニアベイエリアに憧れを持っていた理由は、そこがコンピュータ技術やスタートアップ企業の最先端の地であるということではあまりない。どちらかといえば、シリコンバレーのスタートアップ企業を成立させているポジティブなムードやそのライフスタイルに憧れがあった、といったほうがよいだろうか。集団への同調を強く求められる日本社会の閉塞性に嫌気が〜、みたいな判で押したようなことを言うことはできるが、事実として私は幼少期にカリフォルニアに引っ越したことでいじめから逃れることができた。

しかし、今回のカリフォルニア行きで、前回行ったときですら解けなかったシリコンバレーへの幻想がついに破れるときが来てしまった。

サンフランシスコの街は20年前に比べて歩くだけで危険なエリアが大きく広がり、日が落ちればスリに遭ったり絡まれたりすることに気をつけながら道を歩かなければならない、その一方でホテルには1泊3万円をゆうに超える値段で外国からの旅行者が泊まっている。高級ブランドが店を連ねるエリアも空き店舗が目立ち、店舗が営業しているところも2階より上を見れば空室だらけである。私の知っているサンフランシスコはこんなところではなかったはずだ。

何よりもキツいのが、サンフランシスコ国際空港から市街地を結ぶ公共交通機関(BART)だった。世界の富の多くを集めるシリコンバレーの中心の空港に降り立って出迎えられるのが、共産圏の地下鉄のようなボロボロの車両の列車と、初見で到底使い方がわかったものではない券売機である。アメリカという国は、私企業がやることはうまくいっているように見えるが、その一方で無限の欲望によって突き動かされている国なので、公共事業になった途端にこうも残念な姿を見せてしまうのだ。前回来たときと比べてJRの(災害休止路線を除く)全線に乗ったこともあり鉄道やインフラに関して思うことが増えたのだが、地方の鉄道でこれならばまだ納得したかもしれない、しかし皆の憧れるシリコンバレーでこれか?という幻滅感を覚えてしまった。

そして、一人の大富豪の気まぐれで、インターネットのコミュニティが今も引っ掻き回され続けている:

やっぱり何事もすべてはsunshines and rosesではなく光があれば影もある、ということなのだけど、いろいろと思うことの多い出張であった。ここでは幻想が打ち砕かれたところを主に書いているが、よかったところがなかったということは全くない。生活してみないとわからないことだってかなり多いだろうし、特に生活についていうならば、車をある程度運転できるようになってから気づくこと、仕事をしてからでないと気づかないことだってたくさんあるだろう。

また次に戻ってくるのはいつになるだろうか?

So I wait until my song can wake,
And I pray in time this spell must break,
 
And silent as a soul in flight, I’ll weave my dreams in threads of light
Beyond the orb, beyond, above, into this void I’ll throw my love


技術記事については追って別のところで書く予定です。


  1. 冒頭と末尾の歌詞の引用はアルバムとタイトルを同じくする”Blue Orb”という楽曲のもの。 

  2. 私がカリフォルニア在住時に仲良くしていた友人で、DanceDanceRevolutionやMagic: the Gatheringに入れ込むことになったのは彼の影響が非常に大きい、のだが、2018年10月に亡くなってしまった。詳しいことは2019/4/16の記事にて。