section 01 a website

Shadow World

10:10, October 10 2025

これは何

ブログのセルフホスト運動というインターネットの「影の世界1」について書きます。

の流れを汲む記事で、なので(?)猫叉Masterの曲からタイトルを取っています。beatmania IIDX最新作の段位認定八段にも入ってますね!2

ミンゲイインターネット

…というWebサイトの存在を知って、なるほどセルフホストしてるブログのメタフィードみたいなやつか〜〜〜と思って見てたらここも列挙されていた。根拠としてだいぶ前の記事にJekyllがバックエンドであると書いていることも拾っていた。めちゃくちゃちゃんと見てくれてて嬉しい。

インターネット上にある 民藝 のような良さを、このサイトでは「ミンゲイ」と呼んでいます。
https://mingeiinter.net/about/

ということで、セルフホストのブログを「手仕事によって生み出された日常づかいの雑器に美を見出そうとする」民藝運動になぞらえている。

これを見てブログのセルフホストについて思うことが出たので筆(キーボード)を執っている。

ブログ自作と私

私も昔にはブログシステムの自作を試みたことがある。Movable Type全盛期の頃にPHPで独自エンジンのブログエンジンを作り、自分のWebサイト3のほか、部活4のWebサイトと高校のクラス演劇のWebサイト5と賢竜杯(QMA5・6の頃)のWebサイト6、もしかしたら学部の語学クラスのWebサイト7もそれで作ってたかもしれない。当時気にしていたこととしては、Webは素晴らしい、だがHTMLを理解しないとWebに参入できないのはもったいない、ブログというやつはそれを可能にしてくれる、でもただプレーンテキストを書くだけでは味気ない、なのでHTMLに頼らないなんかしらのマークアップがほしい、だけどHTML直だとわからないしXSSが怖い8、ということを考えて、当時はまだMarkdownというものがなかったので、Markdownのめちゃくちゃサブセットみたいなやつを自分で定義して書けるようにしていた。もちろんコンピュータ科学入門以前の私にはパーサーというものを書ける能力がない9ので正規表現の文字列置換でなのだが。ポケモンがなかったらコンピュータの仕事をしていないとはよく言っているが、私はWebシステムの動作原理というものをブログを作ることで学んでいった。当時のインターネット住民の例に漏れずKENT WEBのYYBBSでCGIを学んだので、どうやらブログも掲示板(BBS)も本質的にはそんなに変わらないらしい、みたいな感覚を、掲示板を改造し、ブログシステムを作りながら学んでいった。

そんな歴史があるので、Markdownとそれを加工するstatic site generatorは革命である。実際に私もブログシステムをstatic site generatorにしようと思ったことはあったがデザインの流し込みが極めてしんどかった。static site generatorの嬉しい点としては生成さえしてしまえばサーバーサイドのスクリプトが走らないので Internal Server Errorで落ちるのからフリーである。 え?軽いのが一番じゃないって?自作してたら知らないバグ踏むほうが怖いんですよ…。これはJekyllを使うようになった今でも似たような感想を持っていて、多くの人の手が入っているJekyllというソフトウェアを使うことでISEを吐くバグからはほぼ自由だが、サーバーサイドで毎回動くものがないということによって知らないセキュリティバグを踏まないで済む、ということがパフォーマンスがいいことよりも嬉しい。

postとpage、ブログとnote

ブログシステムの自作にあたって「HTMLをわからない人にもWebを解放する」とはいったものの、その手段が用意されたとてブログというものの背景にはWeb日記やテキストサイトがあり、Webに自分の日記を公開するという文化がない一般人からすればその派生であるブログも酔狂なものと映ったようで、当時の数理研部長に「ブログはいいんだけどもっとまともなやつ作ってくれ」というような書かれたことがある。タイムライン形式で出るよりも独立にページを作成したいという要望があってそれを「ブログも掲示板もページ投稿も本質的に同じだろう」と後回しにしていたことから出た内容だろうと思うが、TwitterやFacebookが人口に膾炙する以前の話だから、時系列表示に人類は慣れていなかったし、時系列表示しかないことは厄介と思われても仕方がないだろう。

一方で現代の人はブログのことを指してnoteと呼ぶことがある。note (the service)が人々が面するブログシステムとしてよく知れ渡った結果である。でこのnoteだが、postとpageを区別する機能は特にないように見え、すべての投稿は時系列のタイムラインに乗っかっている。ついにタイムライン表示は勝利し、「まともなやつ」になった!

とはいえpostとpageの区別にもありがたみがあることはわかるし、私もAboutページ(と一部直接リンクしていないページ)はJekyllのpageとして時系列タイムラインに乗っからないようにしている。

はてなブログとの使い分け、SEOをしないことについて

このサイトとはてなブログで2つのテキスト投稿先を持っているが使い分けはどのようにしているのか?いちおう言語化できる答えはある。

  • 英語のエントリは自動的にこっち
  • はてなブログに書くのは「〜した」と過去形で書けるタイトルが書けることが前提

最後の「行われたことのログでない文章や思考」をこちらに書いている理由の一つには、このサイトは特に真面目にSEOをしていないことがある。SEOを特にしていないので、必然的にたどり着く人は意図を持ってたどり着いた人ということになる。こちらも意図を持って文章を書いているのだから可能ならば意図を持って向き合ってほしい、そして議論をするならば意図を持って議論をしてほしい、よってXの匿名の捨てアカウントで通りがかりに唾を吐き捨てていくような世界から遠い、SEOのない「影の世界」に意図を持った文章を書いている。最近は政治の話をXやはてなブログなどのSEOのある世界でしなくなったのも、「光の世界」には人と向き合おうとせず脊髄反射でコメントしてくるような人間やボットファームによるtroll accountが跋扈しているからである。

enshitternetの時代、LLMの時代に自らの手に表現手段を取り戻すことについて

「猫叉Master楽曲をタイトルとするBEMANI文学シリーズ」はTwitterの墜落・堕落とFediverseへの移行についてから始まったので、ブログをセルフホストする運動とenshittification10の加速するインターネットへの対策というテーマの関連への言及を避けるわけにはいかない。

A: Gitは分散システムだがGitHubは中央集権的サービスであるように、GitHubは中央集権的サービスだがGitは分散システムである。
https://s01.ninja/ja/lost-wing-at-point-zero.html

と書いたように、Gitで管理されたJekyll-basedな静的サイトジェネレーターでWebサイトをやっているのには特定Webサービスの悪堕ちからの自由という意図もある。株主からの圧力によって積極的なインターネットのenshittificationを進めている北米ビッグテックと比べると日本のWeb業界はだいぶ牧歌的に見えるが、それでも「儲からなくなった」とみなされるようになっては営利企業である以上enshittificationの圧力に晒されることになってしまう。水は低きに流れる宿命を持つのだ。であればいくらかの制御のおける方法で公開したいと思うのは不思議ではなかろう。

また、このように意図を持ってセルフホストしているからには人間の意図が介入しているだろうという推測が立つ。これはLLMのある世界においては無視できない。私はこの文章を書くにあたって執筆はおろか推敲をLLMに任せることはしていない。書かれている内容が悪い、文章が下手ならば、すべて私の責任である。LLMの時代において意図を持って自ら文章を書き、Gitにコミットを刻み込むことで責任を取って世に出すことに意味を感じており、私はこの方法で自ら表現の手段と責任を握っている、といってよい。

そのうえで民藝運動の「日常使い」性の部分には「身体性」との関連は避けられないと思っており11、「LLMの時代に身体性を取り戻すこと」について思うことは別にあるのだが、これは追っていつか書くことになるだろうと思っている。そのときには、また「影の世界」でお会いしましょう。


  1. SEOの行き届く「日向のインターネット」に対する「日陰のインターネット」の意味であり、光に対する闇、つまり「ダークウェブ」「ディープウェブ」や、犯罪や悪意を匂わせるニュアンスではないことに注意 

  2. ぶっちゃけ☆11のShadow World(A)よりも☆10のSigSig(A)のほうが難しい。本当に地力C??? 

  3. 高校時代なのではてなダイアリーに移行する以前のもの。残ってない 

  4. オーケストラのほうではなく数理研究同好会というやつのほう 

  5. ドメイン名持ってたが手放してしまった 

  6. こちらも残ってない 

  7. なんだそれという感じだけどTwitter以前の時代なのでそういうのが流行ってた 

  8. JavaScript実行されるとだるいのもそうだけど、preとかxmpとかを開きタグで入れられるとすべてが終わるとかその程度の知識はあった 

  9. だし形式言語理論のありがたさを理解するのは2024年に@spikeolafとRubyKaigi後にいろいろ話してからなので… 

  10. 提唱者による “Enshittification” (the book)、出ましたね 

  11. Wikipediaにはあまりそのへん書いてなかったので邪推かもしれない。私は文学・美学の正規の教育を受けていない素人です